「はい。電動ろくろです。できますか?」
妻が電話で話している横で、その言葉を聞いた息子が震え上がった。
「えっ! 電動ドクロ? なにそれ。怖い!」
どうやら「ろくろ」を「ドクロ」と聞き間違えたらしい。
妻は以前から、
「いつか陶芸をやってみたい」
と言っていた。
そんなわけで、家族で陶芸体験に行くことになった。
最初、息子は、
「行かない。家でゲームする」
と言っていた。
ところが「電動ドクロ」ではなく「電動ろくろ」だと分かると、興味が出てきたらしい。
「早く行くよー」
さっきまでゲームをすると言っていたのに、今度はやる気満々だった。
工房に着くと、エプロンを借りて、先生から作り方を教えてもらった。
右側のペダルをゆっくり踏み込む。
ろくろが静かに回り始める。
目の前にあるのは、ただの土のかたまり。
ここから器を作っていく。
まず土を手になじませ、円柱のような形に整える。
次に、真ん中へ親指を入れる。
グイッ。
少しずつ深くしていく。
そして、今度は内側から外へ向かって広げていく。
最後に高さを出し、手の角度を変えながら形を整える。
先生が作ると、ほうれん草のお浸しでも盛ったらおいしそうな小鉢ができた。
「じゃあ、やってみましょう」
簡単そうに見えた。
でも、実際にやると難しい。
少し触っただけで形が変わる。
力を入れすぎると歪む。
慎重になりすぎると、思うように伸びない。
昔読んだ本の中にあった、陶芸の達人の言葉を思い出した。
器を作っているのではない。
土の中から器を取り出しているのだ。
そんな気持ちで取り組んでみた。
……が。
土の中から取り出せたのは、少し歪んだ茶碗だった。
先生が、
「失敗ではなく、個性ですから」
とフォローしてくれた。
どうやら私は、土の中から自分の個性を取り出してしまったらしい。
ふと横を見る。
息子は、思った以上に上手に土を扱っている。
形もきれいだ。
「なんでそんな上手なん?」
私よりずっときれいな茶碗が、息子の前で静かに回っていた。
……。
父、完全に負けている。
陶芸体験を終えてからも、先生が教えてくれた順番が頭に残っていた。
土台を決める。
深く掘る。
広げる。
高さを出す。
最後に形を整える。
そこで、ふと思った。
「あれ?」
これ、考えを整理するときと同じじゃないか。
最近、記事のテーマについて考えるとき、
「どれだけ深く掘れるか」
「どれだけ多くの人が入りやすいか」
という二つの軸で考えることがある。
でも、ろくろでは、いきなり外へ広げない。
まず真ん中を掘る。
深さが決まってから、少しずつ外へ広げていく。
深く掘ることと、広くすることは別の作業なのだ。
ろくろを回していたら、そのことが妙に腑に落ちた。
考えるときも、最初から「みんなに分かりやすい答え」を作ろうとしなくていいのかもしれない。
まず自分の中で深く掘る。
そのあとで、人が入りやすい形に広げていく。
土を整えるように、順番に考えを整えていく。
そんなことを、陶芸が終わってから考えていた。
そして、もう一つ思った。
同じ先生に教えてもらい、同じ土を使っているのに、
私の茶碗と息子の茶碗は、まったく違う。
息子の茶碗はきれいに形が整っている。
私の茶碗は、少し歪んでいる。
でも、先生が言っていた。
「失敗ではなく、個性ですから」
その言葉を思い出す。
上手に作ることと、自分らしいものを作ることは、少し違うのかもしれない。
…まあ、
できれば私は、もう少し上手に作りたかったけど。
2か月後。
あの少し歪んだ茶碗が、どんな形で焼き上がってくるのか。
今から楽しみにしている。
息子の茶碗と並べたら、きっと面白いだろう。
「電動ドクロ」から始まった、家族の陶芸体験。
土をこねて、形を作って、失敗して。
最後には、思いがけず自分の考え方まで少し整えてもらった。
もしかすると、器だけじゃなくて、
自分の中にあるものも、少しずつ形にしていくものなのかもしれない。
焼き上がった二つの茶碗を並べる日が、今から楽しみだ。
…ちなみに。
茶碗を作ったあと、余った土でもう一つ小鉢を作った。
こっちは、なぜか結構うまくできた。
どうやら私の個性は、
茶碗より小鉢に向いていたらしい。
もう少し、ピートン家の実験を読む
生活のドラクエ化 実験中…
ゲーム好きの息子を動かすために、家の中をドラクエにしてみた。
20万円の楽器をあきらめて塩ビパイプで作ったら最高の夏休みになった
20万円の楽器は買えなかった。だから、息子とホームセンターへ行った。
AIに聞いたら、逆に怖くなった話
AIは正しい答えをくれた。でも、安心をくれたのは友だちだった。
次は、何をやってみるのか。自分でもまだ分かりません。
子育て、家族、仕事、日々のちょっとした疑問。
実際にやってみて、転んだり、笑ったり、たまに何かを発見したり。
そんな記録を、これからも書いていきます。
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電動ドクロ、笑かわいい😍
昔、陶芸習っていたので、難しさわかります!電動は特に難しいですよね。
自分の作品が出来上がると、もっと作りたくなりますよ〜😆
息子くんの興味スイッチの入り方がもう…可愛すぎました🤭♡深く思考するのが苦手さんの私なので😅陶芸と記事作りの掛け方に、ただただ拍手でした👏👏👏