ダメと言うだけでは終わらせたくなかった。
空き地を畑にした外国人実習生と、畑の引っ越しを決めた日
丸投げされた!
「おーい、ちょっといいか~」
週末の夕方。
少しイライラしている上司に呼ばれた。
こんな時の「ちょっと」は、大体ちょっとじゃない。
「不動産屋さんから総務にクレームが入った。」
何をやらかしたんだろう?
そう思っていると、上司が続けた。
「実習生がアパートの向かいの空き地を畑にしてるらしい。」
……ん?
今まで生きてきて、一度も聞いたことがないクレームだった。
頭の中が「?」でいっぱいになる。
すると上司が一言。
「じゃ、よろしく。」
何がよろしくなの。
一緒に農業やればいいの?
そう思いながら、翌日寮へ向かった。
犯人は、本物の農家だった
まずは現場を見に行った。
そして思わず立ち止まる。
空き地の一角が、見事な畑になっていた。
これは家庭菜園ではない。
畝の高さ。
支柱の立て方。
野菜の並び。
どれを見ても素人ではなかった。
実は私は農学部出身だ。
だから分かる。
長年土に触れてきた人の畑(うね)だった。
……感心している場合ではない。
私は実習生を集めた。
「向かいの空き地で畑を作っている人いる?」
日本語が苦手な子もいるので、空き地を指さし、鍬を振る真似をして伝える。
すると、みんなの視線が一人に集まった。
ニョンさんだった。
「あの畑は君が作ったの?」
通訳してもらうと、ニョンさんは満面の笑みで頷いた。
……まぶしい。
そんな笑顔で頷かれると、注意する方がつらい。
「ニョンさん、日本では使っていない土地にも持ち主がいるんだ。勝手に野菜を育てちゃいけないんだよ。」
「ダメ」と伝えるのは簡単だった
通訳を交えて説明すると、今度は悲しそうな顔で謝った。
その表情を見ているのが苦しかった。
空気を少し変えたくて聞いてみた。
「でも、すごく立派な畑だね。家でもやってたの?」
ニョンさんは少し安心したように話し始めた。
「家でも作っていました。」
「日本でもやってみたかった。」
「だから作りました。」
詳しく聞くと、最初はベランダでミニトマトを育てていた。
もっと育てたくなって花壇へ。
さらに足りなくなって空き地へ。
……なるほど。
いや、なるほどじゃない。
花壇を見ると、ネギやジャガイモまで元気に育っていた。
花壇まで畑になっている。
隔週で寮を見回っていたのに、全然気付かなかった。
もちろん元に戻してもらわなければならない。
でも。
ここまで育った野菜を、全部抜くのか。
私の実家も兼業農家だった。
植えたものを育てたい気持ちは、少し分かる。
私は別の方法を探すことにした。
野菜の引っ越し
その時、思い出した。
そうだ。
別の寮は一軒家だった。
庭がある。
私は車を走らせながら考えていた。
事情を説明すると、
「もちろん、いいよ。」
みんなはすぐに受け入れてくれた。
ニョンさんの野菜がおいしいことを、みんな知っていたからだ。
私は急いで戻った。
「ニョンさん。」
「この野菜たち、引っ越ししないか!」
通訳してもらうと、ニョンさんの表情がぱっと明るくなった。
いい。
本当に、いい農家の顔だった。
その日のうちに、みんなで植え替えを始める。
私はホームセンターへ向かった。
会社から毎月少しだけ、実習生への差し入れ代が出る。
いつもならアイス。
ジュース。
お菓子。
でも、その日私が選んだのは……
培養土だった。
「会社からの差し入れだよ。」
そう言って土を降ろすと、みんなが笑った。
「え~、今日はお菓子じゃないの~?」
そんな声が飛ぶ。
でも実家が農家の子も多かった。
「いい土ですね。」
そう言いながら、慣れた手つきで畝を作っていく。
誰かが苗を運ぶ。
誰かが土をならす。
誰かが水をかける。
気が付けば会社の指導ではなく、みんなで畑を作る休日になっていた。
私が応援したかったもの
その年の夏。
寮を訪ねると、野菜たちは元気に育っていた。
ニョンさんは、以前とは違う場所で畑を眺めていた。
そこには、みんなで作った畑があった。
あの日、私が守りたかったのは野菜ではなかった。
ニョンさんが、好きなことを続けられる場所だった。
会社のお金で買ったのは、お菓子ではなく土だった。
でも、あの日育っていたのは野菜だけではなかったのかもしれない。
続けられる場所があることで、人は少しずつ根を張っていく。
それは仕事でも、子育てでも、変わらない。
子育ても仕事も、「人を変える」のではなく「仕組みを変える」という視点で、実際に試してきたことを書いています。
「この考え方、好きだな」と感じていただけたら、ぜひ登録して続きを読んでいただけるとうれしいです。
問題が起きた時、すぐに「やめさせる」のではなく、続けられる仕組みを探す。
これは今回の畑の話だけではありません。
モスバーガーで感じた、もう一つの「場所を作る話」です。






ピーさん、これはLOVE Phantomの記事ですよね⁉️
無償の愛を感じます♡そう思うと、ピーさんの記事内容って全てに愛がありますよね😌🫶
まさに、藤井風さんの精神をお持ちの方だとお見受けする。
ところで、LOVE phantomってどういう意味ですか❓
ピートンさん、こんにちは✨
ピートンさんが大事にされたものの尊さにふれ、うるっ🥹ときてしまいました。
やさしく理解のあるピートンさんに見守られている留学生のみなさん、本当によかったですね😊
他者の想いをくんで、自分に出来ることを探して行うという“まごころ"からの行動、それをさらっとしてのけたピートンさんの器の大きさにただただ拍手👏👏👏です!